プレスリリース
艸居(京都)では、堀江美佳の個展「青の始まり」を開催いたします。2023年の「木、水、そして光」展に続き、2回目の個展となります。
堀江は京都で育ち、京都芸術大学で写真とデザインを学んだ後、ロンドンのキングストン大学でファインアートを勉強します。帰国後の2013年からは、石川県加賀市山中温泉を拠点に国内外で活動しています。彼女の制作は、山中温泉の山中に生息する雁皮(がんぴ)の採取から始まり、繊維をたたき、アトリエの横を流れる小川で漉して和紙を作ります。その手漉き和紙に「サイアノタイプ」という技法で自身が撮影した写真をプリントします。太陽光で映し出される多様な濃淡の青で表現され、独自の質感と深みを持つ作品を生み出しています。
本展では、堀江が過去3年間に渡り旅した、故郷の京都、古都・奈良の街並みや緑豊かな亜熱帯、静かな村、海岸線、山岳地帯など、光の変化と共に変容する風景を展示いたします。堀江は山々を抜ける風、小川のせせらぎ、夕陽にきらめく水面など、自然の中の「青」の移ろいを制作の軸としています。これらの青は単なる色彩ではなく、静謐さと強さを併せ持つ自然の本質として、堀江の制作活動の根底にあります。
また、本展では、能登半島地震によって刻まれた喪失の記憶、九谷焼シリーズ「Fragment of the Earthquake」も同時に展示いたします。堀江のスタジオは、能登半島地震によって大きな変容を余儀なくされました。大地が裂け、分断された生活の痕跡、愛おしい風景が取り返しのつかないほど変容する様を、恐怖と畏敬の念を胸に体験しました。かつて友人家族の窯で丹念に作られてきた九谷焼の破片の山は、金継ぎによっても救いきれないほどに損なわれていました。その一方で、この体験は、「破片」を別の視点で見つめ直すきっかけとなり、破片一つひとつに新たな生命力を見出します。砕けた九谷焼は、手仕事の儚さと、持続的な力の両方を映し出す存在へと変化していきました。
本展の中心となる新作となる能登の七尾湾を背に広がる収穫直後の稲穂を題材にした三連作は、一枚一枚の写真が持つ静かな力が、三作の連なりの中で広がりを見せ、観る者の内側にある記憶や風景を静かに浮かび上がらせます。
冬の寒い季節には、清らかな川の水と雁皮の繊維を用い、一枚一枚手漉きで和紙を制作します。絶え間なく移り変わる自然や時間の流れの中で残っているもの、人の手によって守られてきたものを観察しながらもいつも変わらない青に立ち戻る、堀江が見つめる精神性を感じていただけましたら幸いです。
貴重な機会に、是非ともご高覧いただきたくご案内申し上げます。
