Expression of Metal : Koji Hatakeyama, Rusu Aki, Satoshi Mizushiro, Tsuyoshi Ueda

畠山耕治は銅器の伝統的産地として知られる富山県高岡市出身の金工作家です。型に溶かし た金属を流し込む鋳金技法を用い、要素を極限までそぎ落としたシンプルで奥行き深いフォル ムの作品を数々作り上げてきました。「素材には意識が宿っている」という考え方のもと素材と 作家の相互作用によって作品表面に立ち現れてくる色彩や質感は、空間に清廉な存在感を放ち ながら、雄弁に語りかけます。 本展では、武家の床の間にしつらえられた三幅の掛け軸をイメージした角棒状の大型作品「長 形のもの」を中心に壁面作品を展示いたします。

 

留守玲は鉄材をガス溶接で溶接・溶断するという独自の制作技法で、鉄という素材との対話を 続けています。「熔融、凝固、歪みなどの現象を凝視していると、そこには様々な金属の表情を 発見する事が出来、その表情とは、表層の凹凸の事ではなく、色々な性格を持った鉄の状態の事 である。」と留守は語ります。 本展ではこれまで作家が数多く取り組んできた床置きのオブジェ作品のほか、近年の新しい 試みである壁面作品を展示いたします。溶接により紡がれた一本の鉄線は、はかなく繊細であり ながら多量な情報を伴って観る者を思索の世界に誘います。

 

生き物と植物といった異なるモチーフを融合させ、対象物への緻密な観察と彫金技法により 写実的に表現された作品が水代達史の持ち味です。「制作において、”童心”や”粋”と行った言葉で 表現される遊び心を作品の中に表現している。」と水代は言います。自身の持つ技法や型に落と し込むのではなく、対象物の観察から得た発想を柔軟に造形に取り組み、また、独立した二つの 要素を矛盾なく一つの作品に仕上げる巧みな構築力によって、洗練されたバランスを築き上げ ます。

 

上田剛は鋳金技法による立体、平面作品の制作を行う金工作家。数多く存在する制作行程の中 でも上田が特に重視しているのは着色技法です。「金属という、一見硬く閉ざされたかのような 物質に秘められた時間性や流動性を引き出し、様々な色や表情を抽出することに、魅力と可能性 を感じている。」と上田は語ります。

 

金属表面を酸化させたり錆させたりすることで生まれる色彩は、熱の加え方、薬品の種類のみ ならず微細な条件の違いにより立ち現れてくるものであり、観る者にとってもそれは意外性と 驚きをもって受け止められることでしょう。

 

 

畠山耕治(はたけやま こうじ)

1956 年富山県生まれ。1980 年に金沢美術工芸大学工芸科鋳金専攻を卒業し、現在は金沢美術 工芸大学教授を勤めつつ富山県高岡市にて制作を行う。主な受賞歴には 2000 年第 11 回タカシ マヤ美術賞、2007 年佐野ルネッサンス鋳金展大賞、2012 年第 18 回 MOA 岡田茂吉賞 MOA 美術 館賞などがあり、主なコレクションとしてはヴィクトリア&アルバート美術館(イギリス)、フ ィラデルフィア美術館(アメリカ)、デンマーク王室、ヴィクトリア国立美術館(オーストラリ ア)、東京国立近代美術館など多数。

 

留守玲(るす あき)

1976 年宮城県生まれ。2002 年に多摩美術大学大学院美術研究科を修了し、現在は多摩美術大 学工芸学科非常勤講師を勤めつつ神奈川県にて制作を行う。主な受賞歴には 2003 年第 11 回日 本文化藝術奨励賞日本現代藝術奨励賞、2016 年第 2 回菊池寛実賞、第 27 回タカシマヤ美術賞 があり、コレクションとしては山口県立萩美術館・浦上記念館、菊池寛実記念智美術館がある。

 

水代達史(みずしろ さとし)

1982 年千葉県生まれ。2011 年に東京藝術大学美術研究科を修了し、現在は金沢美術工芸大学 工芸科講師を務めつつ制作を行う。主な受賞/入賞歴には、2009 年東京藝術大学原田賞、台東区 長奨励賞、2010 年 Via art 2010 審査委員池内務賞などがあり、海外においてもグループ展など へ多数出展している。

 

上田剛(うえだ つよし)

1986 年奈良県生まれ。2012 年に東京藝術大学美術工芸科を修了し、現在は富山県高岡市 にて制作を行う。主な受賞/入賞歴には、2011 年第 6 回佐野ルネッサンス鋳金展奨励賞、 2012 年東京藝術大学原田賞、2013 年第 53 回日本クラフト展入選(同 2014 年)、2017 年 U-50 国際北陸工芸アワードなどがある。