菅野 有紀子: 「撫でる、抱き寄せる、リードを持つ」

艸居(京都)では、菅野有紀子「撫でる、抱き寄せる、リードを持つ」を開催いたします。兵庫県を起点に活躍を広げる菅野は、極細の透明なガラスの線を用いて、物語性のある作品を詩的に表現します。2019年には「第4回金沢・世界工芸トリエンナーレ」大賞を受賞するなど、国際的にも大きな注目を浴びています。艸居において初の個展となる本展覧会では作品12点を展示致します。

 

菅野の作品は、バーナーワーク、キルンワークや接着などの多様な技法を用いて、ガラス、銅金網や石膏粘土などの素材から適切に選択し、組み合わせて制作されています。服は服らしく、髪は髪らしく見えるよう、その数多くある技法と素材を慎重に選択し、ガラス作品とは思えないほど作品の部分ごとに幾多もの表情を作り上げます。

自分自身の経験やそこから生まれる感情を制作の出発点として人や生き物をモチーフに制作している菅野は、自然の中には様々な特性を持った植物や生き物が集まり一つの世界を構築しており、人間もその一部であるということ、常に変化し流動的であることから多くのヒントを得て、日常におけるプライベートな感情を詩的に伝えています。

 

制作は時間がかかり少しずつの作業ですが、ガラスの線や点を積み重ねていくことでガラスが増殖していく様子は、自身の手を離れて作品が自ら成長しているような感覚を覚え、菅野はそこに制作の楽しさを感じます。

ガラスは光を造形できる素材であり、光はいにしえより人間の美的感覚に強く訴えてきた現象であると言われています。そのような性質を持つガラスに菅野は可能性を憶え制作しています。

 

本展では、ペットと人間の関係に焦点を当て、「触れる」ことを通して瞬時に伝わる感覚や感情、反転するペットと人間の関係など、視覚的には認知できないけれども、確かな実感を得られるものを具現化し、ペットと触れ合うことで起こる心身の変化を表現します。

離れていても簡単に繋がれる現代社会において、「触れる」という確かな心身の実感の大切さを本展で感じ取っていただけますと幸いです。