艸居(本店)では、マルタ・コラーダの個展「KAMI」を開催いたします。本展は艸居での初めての個展であり、また作品自体も日本初公開となります。Mei Mei(メイメイ)というアーティスト名で活動するマルタは自身の作品を通して、神妙で独特な世界観を放つ神話に生命を吹き込み、魅惑的かつ現代的な表現で、観るものをファンタジーの世界へ誘い込みます。

 

彼女の作品は、フェルティングという工芸技術を用いて制作されます。古来より女性が扱う伝統技術として家庭内で活用されたフェルティングは、衣服や装飾品を作るために使用されてきました。その中でも彼女は複雑なニードルフェルトの技法を用いて、伝統技術の可能性を現代アートの世界に広め、これまでロンドンのサーチギャラリーなどで作品を展示してきました。

 

マルタは2008年にサラマンカ大学および、バルセロナ大学で美術と写真を学び、卒業後は写真家としてキャリアをスタートしました。以降、ロンドンやマドリード、上海など世界各地のギャラリーで勢力的に展示をおこない広く認知されてゆきます。また作品は数々の賞を受賞し、英国内外の個人コレクションにも所蔵されております。

 

2016年からはMei Mei(メイメイ)というアーティスト名で陶芸とフェルトを組み合わせたウール・スカルプチャーを手掛けるようになり、作家として大きな転機を迎えます。本展はそれ以降に開催される、初めての本格的な個展です。スカルプチャーを手掛けるようになったマルタは、彼女自身の精神的な側面を深掘り、心的傾向を再認識し、人としてまた作家としてさらなる成長を遂げました。また、それらの心的変化を様々なメディアを用いて表現するようになります。ドローイングからスタートし、自身のコレクションから素材を集め、ウールや粘土、発泡スチロールを用いたスカルプチャーなど。また写真家としての経験を活かし、自身のエディションプリントを作ることで一連のプロセスを循環させます。

 

マルタはこの世に存在する全てのものに魂が宿ると考えています。言い換えるとそれは、この世の万物が神のような存在であり、KAMI(聖なる存在)と呼ぶことができるでしょう。彼女によって完成させられた作品は、自身の身体から切り離された魂を持つ存在です。展示する作品たちに対するそのような想いを込め、展覧会を「KAMI」と題しました。作家の溢れ出る想いが込められた、聖なる存在「KAMI」たちを、ぜひご高覧ください。