艸居(本店)では、小池一馬と石井亨による二人展「小石景」を開催いたします。架空の古代遺物をテーマに黒いセラミック彫刻を制作する小池、現代社会を糸目友禅染め本来の持つ優美な線を使い色鮮やかに染め上げる石井。二人は歴史あるマスターピースから影響を受けながら、伝統や芸術の再考および刷新を試みます。本展では、小池の黒いセラミック彫刻と石井の糸目友禅絵画を、艸居の空間に配して本展でしか見ることのできない<景>を創造します。
小池一馬は、画家・彫刻家として現在大阪を拠点に活動しています。「架空の古代遺物」をテーマに、偶像、ツボ、大型ネコ類、植物、パイナップルなどをモチーフとしたセラミック彫刻、ペインティング、ドローイングを制作しています。「異なる要素が調和しながら共存した状態」や「モノの用途や意味が変化する過程」へ関心を持ち、さまざまな場所と時代に由来するイメージを取り混ぜて作られる作品は、独特の浮遊感をまとっています。本展で小池は、黒いセラミックのみに焦点を絞り展示をいたします。静穏で硬い印象、どこか滑稽な表情を持つ彫刻たちから鑑賞者は想像力を掻き立てられ、その作品の物語を空想します。しかしその一方で、作品が黒単色であることや、作品のタイトルがBC(ブラック・セラミック)と数字の並びからなる記号であることから、作品の情報を押さえ込みコントロールしようとする、小池の意図を感じることができます。
⽯井亨は、「現代における日本伝統工芸の再解釈と現代美術の批評性」をテーマに、伝統的な染色工芸の⾰新を試み続けています。本展で石井は、江戸時代の糸目友禅技法で令和の東京の光を染め上げた作品「令和の浮世絵:東京の⾵景」を展示します。本展開催地の京都は友禅染発祥の地であり、300年以上も前から、鮮やかな⾊彩で着物へ装飾模様を施す技術によって江⼾の⼈々を魅了してきました。本展の作品のイメージは、石井がフィルムカメラで撮影した東京の風景をデジタルエフェクトすることで、今の東京の光を抽出し、その光を江戸時代の技法で染め上げています。糸目友禅染と浮世絵という江戸時代に誕生した⽇本の伝統⽂化に、今の東京が紡ぎだす光をクロスさせることで、現代における浮世絵の表現の可能性を問い直します。また、⽯井は⽂化庁新進芸術家海外研修員に選出され、2 年間のロンドン研修での⻄洋と⽇本のステイニング絵画および染⾊表現の探求を礎に、新たな染⾊絵画を考察しています。これまでに、日常の視点から⽇本社会をコミカル、かつ⾵刺的に描いた「サラリーマン」シリーズや、 現代都市の象徴である都市のネオンを主題にした「都市夜景」シリーズなど、変容し続ける日本社会を現代の浮世絵としてユーモラスに表現してきました。
二人の作品は、過去のイメージと現代の感覚が常に同居しており、どこかで見たことがありそうで無いユニークさを持っています。小池のセラミック彫刻と石井の染色絵画を艸居の会場に配して<景>を創造する「小石景」展。この機会にぜひご高覧ください。
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