道川省三の作品は、土と石のライフサイクルについて深く美しく私たちに教えてくれます。彼は火山地帯の北海道で生まれ、岩が形成される場所で育ち、猿投山での日々の散策で地元の石を感じ取り、集め、土に優しさとエネルギーを込め、手で形作る。まるで大地の使者のようです。

 

展示会を企画するにあたり、私たちは自然を展示室に招き入れることで彼の作品とその歩みを映し出そうと考えました。時が経つにつれて、巨石は石となり、石は小石へと砕け、やがて小石は粘土の粒子へと分解されます。これらの作品は、本質的に石の原形を尊重し、敬意を込めた彫刻作品なのです。

 

 — トレイ・トレイハン(トレイハン・アーキテクツの創設者兼CEO)

 

 

京都 2025年4月13日 ― 艸居(古門前)にて、陶芸家、道川省三と建築家、トレイ・トレイハンによるコラボレーション展「山の音」を開催致します。展示では、道川の最新作の陶芸作品29点と、トレイハンによって配置される自然石11点を展示いたします。本展は、芸術と建築において、二者が共通して根源的な要素とする、造形、自然、空間、素材、環境など観点から創造性と革新に満ちた対話を重ね構築されたものです。それは「山の音」のように、山中の静けさの中で、二者の美意識が呼応し、作品と石が対話する形で具現化されています。

 

道川の作品は螺旋状の力強さと孤高の静けさを併せ持ったフォルムで知られています。それは、作家が生まれ育った北海道の洞爺湖や有珠山の風景を表し、自然の雄大さや優美さ、それと相反して、静寂や脅威を肌で感じながら育った作家の自然への畏怖の念を感じさせます。

 

これまでの道川の制作方法は、土の塊の外側にワイヤーで切り込みを入れ、轆轤を回転させながらフォルムを形成していくものでした。本展では、土の塊の内部にワイヤーで切り込みを入れるという、これまでにない画期的な方法で、《Volcano Sculptural Form》《Kohiki Sculptural Form》《Kohiki Natural Ash Sculptural Form》《Tanka with Silver Sculptural Form》の代表的な作品シリーズを完成させました。

 

道川の土との向き合い方は非常に真摯で、土が本来持ち合わせている形状に耳を傾けながら、最大限の可能性を瞬時に引き出します。それはインプロヴィゼーション的で、道川の楽観的な人生観を暗示しているようでもあります。

 

トレイハンは、道川の彫刻作品と自然との調和を象徴する自然石をギャラリー空間に展示いたします。本展の空間設計にあたり、龍安寺の石の配置を参照しています。入って直ぐの日本建築の部屋には自然の雄大さと力強さを感じさせる大型の石を3石、後ろのホワイトキューブの空間には、桂川の役石を5石配置します。そして、前と後ろの部屋を繋ぐ床の間には円柱の束石を、階段下の空間や通路には小川治兵衛の守山石を置き、その上に作品を展示いたします。今展は、石から生まれる粘土の生命循環を観る者に思い起こさせ、自然の中での芸術の存在を再認識させるものです。

 

トレイハンは2025年大阪・関西万博のアメリカ館のパビリオンの建築をデザインし、本展は万博と同時開催いたします。不確実で複雑、不透明で曖昧な時代において、アートを通して、アメリカと日本、大阪と京都、そして、世界の人々が国境を越えて交流し、よりよい未来を形成することを目指します。

 

 

道川 省三 (みちかわ しょうぞう)

1953年北海道虻田郡洞爺湖町生まれの道川省三は、愛知県瀬戸市を拠点としながら、欧米、アジア圏など30ヵ国以上で個展やワークショップを開催。美術館コレクションは、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(ロンドン、イギリス)、アシュモレアン博物館(オックスフォード、イギリス)、アベリトゥイス大学(ウェールズ、イギリス)、ウェールズ国立博物館(カーディフ、ウェールズ)、パラント・ハウス・ギャラリー (チチェスター 、イギリス) 、チェルヌスキ美術館(パリ、フランス)、リヨン美術館(リヨン、フランス)、カルロ・ザウリ美術館(ファエンツァ、イタリア)、ファエンツァ国際陶芸美術館(ファエンツァ、イタリア)、リートベルク美術館 (チューリッヒ、スイス) 、コーブルク要塞美術館 ヨーロッパ現代ガラス館(コーブルク、ドイツ)、ハンブルグ美術工芸博物館(ハンブルグ、ドイツ)、ロサンゼルス・カウンティ美術館(ロサンゼルス、カリフォルニア、アメリカ)、フィラデルフィア美術館(フィラデルフィア、ペンシルベニア、アメリカ)、クロッカー美術館(サクラメント、カリフォルニア、アメリカ)、アジア美術館(サンフランシスコ、アメリカ)、ミネアポリス美術館(ミネアポリス、ミネソタ、アメリカ)、ウスター美術館(ウースター、マサチューセッツ、アメリカ)、中日青年交流中心(北京、中国)、青龍寺(西安、中国)、茨城県陶芸美術館(笠間、茨城)、島田市博物館(島田、静岡)など多数。 

主な個展は 2004・2007・2009年「Shozo Michikawa」ギャルリ・ベッソン(ロンドン、イギリス) 、2005年 北京紫禁城(北京、中国)、2005年 山東省博物館(山東省済南市、中国)、2011・2013・2015・2017・2020・2021・2023年 アースキン・ホール&コー (ロンドン、イギリス) 、2016年「Natura, Gesto, Scultura」カルロ・ザウリ美術館 (ファエンツァ、イタリア)、2017年「Nature Into Art」Silverlens Gallery(マニラ、フィリピン)、2019年「40周年記念展 道川省三」 艸居 (京都)、2021年「Shozo Michikawa」ホストラー・バロウズ(ロサンゼルス、アメリカ)、2022年「Michikawa Shozo Solo Exhibition」 Sokyo Lisbon (リスボン、ポルトガル)、2022年「Haiku in Clay」(マニラ、フィリピン)、2023年「道川省三 個展 たづたづし ー伝統の先に⾒えるものー」SOKYO ATSUMI (東京) 、2024年 ホストラー・バロウズ(ニューヨーク、アメリカ)などがある。

主なグループ展には、1999年「Gallery Pots」ギャルリ・ベッソン(ロンドン、イギリス)、2006年「Japanese Crafts」ギャルリ・ベッソン (ロンドン、イギリス)、2009年「日本の工芸1870-現在」(フィラデルフィア、アメリカ)、2014年「ArtCe’ram」(セーブル、フランス)、2018年「Ceramics Now!」ファエンツァ国際陶芸美術館 (ファエンツァ、イタリア)、2018年「Masterpieces-日本陶芸の400 年」(ホーガネス、スウェーデン)、2019年 アートフェア東京、艸居(東京)、2021年「Art Basel Hong Kong」タカ・イシイギャラリー(香港)、2022年「日本現代陶芸との呼応と対比」艸居アネックス(京都)、2022年「Art Basel, Basel」タカ・イシイギャラリー(バーゼル、スイス)、2023年「Fog Design +Art」, ホストラー・バロウズ(サンフランシスコ、アメリカ)、2023年「Art Fair Philippine」、シルバーレンズ・ギャラリー(マニラ、フィリピン)などがある。

受賞歴には、2005年「CERAM ICAM OSAICO」グランプリ(ラベンナ、イタリア)、2018年「The Bavarian State Prize at the International Trade Fair in Munich」金賞・ミュンヘン国際ハンドクラフトフェア(ミュンヘン、ドイツ)、2018年「Ceramics Now : Faenza Prize is 80 years old 」ファエンツァ国際陶芸美術館(ファエンツァ、イタリア)、2019年「ロエベ財団クラフトプライズ2019」 ファイナリスト・ロエベ財団 (東京)、2022年「フランス社会功労奨励賞」王冠付金賞(パリ、フランス)がある。

 

トレイ・トレイハン (Trey Trahan)

トレイハン・アーキテクツの創設者兼CEO。ヴィクター・F・「トレイ」・トライハンIII世(FAIA)は、技術革新、素材の表現、そして静謐な美しさを表現したデザインで世界的に高く評価されています。トレイハンの建築理念は、各プロジェクトとその場所における物理的、文化的、社会的な環境を深く考慮します。作品は、平和、正義、そしてコミュニティとのつながりを表現し、伝統的な建築の枠を超えた新たな領域を切り開いています。代表的な建築作品には、2025年大阪・関西万博、アメリカパビリオン(大阪)、シーザーズ・スーパードーム(ニューオリンズ、ルイジアナ、アメリカ)、ウッドラフ・アート・センター内に位置するアライアンスシアター(アトランタ、ジョージア、アメリカ)、ルイジアナ州立博物館およびスポーツの殿堂(ナチトシュ、ルイジアナ、アメリカ)など多数。
トレイハン・アーキテクツの革新的なデザインは、これまでに100以上の国、州、地域、そして地元のAIA(アメリカ建築家協会)賞を受賞してきました。また、アーキテクト・マガジン(AIAの公式誌)が発表する建築事務所の全米国ランキング『Architect 50』において、アメリカ内で第1位と高評価されました。
彼の活動と共に、トレイハンは建築、持続可能性、保存に関連する多数の団体やイニシアティブに積極的に関与しています。現在、The Cultural Landscape Foundation(文化的景観財団)の理事会メンバーとして活動している。トレイハン・アーキテクツの理念の延長線と実践として、トレイハンはルイジアナ州、セントフランシスヴィルとチリのパタゴニアにある2つの保護地域を監督しており、コンサルタント、学者、専門家のチームと共に、人間の居住と生態系がどのように絡み合っているかを考究しています。彼らの仕事と理念に基づいた取り組みを通じて、トラハンとトレイハン・アーキテクツは、建築がどのように謙虚で恒久的なビジョンを持って、物語を明らかにできるかを探求し続けています。

 

(提供:トレイハン・アーキテクツ)