ジェニファー・リー: セラミックとドローイング

静けさの中に、凛とした佇まいを感じさせるリーの作品は、釉薬を使わず、酸化金属を土に混合するという独自の手法で、独特の色と洗練された形が融合するスタイルを確立させました。リーは様々な旅行先で集めた酸化物と土を、すぐには使わずスタジオに数十年寝かせます。それは、リーの記憶と共に熟成され、焼成後の壺の仕上がりに変化をもたらします。手びねりで成形された器には複数の土が使われており、部分ごとに色が混じり合い、複雑なグラデーションや濃淡のある斑点がさまざまな表情を作り出します。これらはリーの長年の経験やテストピースに基づいており、酸化物がどう反応するのか、配合や配分を計算した化学反応の結果によるものです。そして、僅かな接地面が絶妙のバランスで器を支え、淵の物静かな傾斜は彼女の作品を強く印象付けています。

 

土を焼成することで瞬間を切り取り、作品に普遍性を持たせることができるとリーは言います。また、作品の記録として制作後に描かれるドローイングは、制作の記憶を留めながらも、見る者を思索の世界へ導きます。

 

リーは1994年の初来日以降、日本との関わりを深めてきました。2009年には21_21 DESIGN SIGHTで開催されたイッセイミヤケによる展覧会「U-Tsu-Wa」展に出展。インスタレーションは建築家の安藤忠雄が手がけ、リーの器が大きな水面に幻想的に浮かべられました。その他、ささま国際陶芸祭への招聘(2013年)、滋賀県陶芸の森での3度の招聘滞在制作(2014、2015、2018年)や、益子国際工芸交流事業での招聘滞在制作(2019年)などがあります。本展では、

手びねりの器10点、湯呑み20点、陶板1点、ドローイング5点を展示いたします。是非ともこの貴重な機会にご高覧いただきますようお願い申し上げます。

 

 

ジェニファー・リー
1956年スコットランド・アバディーンシャー生まれ。1975-79年エジンバラ・カレッジ・オブ・アート(スコットランド)で陶芸とタペストリーを学び、1980-83年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)にて陶芸を専攻。カレッジ在学時代から個展を開催し、1985年

 

にヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)に作品を購入される。1994年「ギャラリー小柳」(東京)にて日本で作品を初展示。2009年には三宅一生氏がディレクションされた「U-Tsu-Wa」展にも招かれる。2018年第2回ロエベ・クラフト・プライズを受賞、2021年大英帝国勲章(OBE)を受章する。作品は、大英博物館(ロンドン)、ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、スウェーデン国立美術館(ストックホルム)、ロサンゼルス・カウンティ美術館(ロサンゼルス)、ミネアポリス美術館(ミネアポリス)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、滋賀県立陶芸の森(滋賀)益子陶芸美術館(栃木)、兵庫陶芸美術館(兵庫)など世界の様々な国のパブリックコレクションに収蔵されている。

 

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