SOKYO ATSUMIでは日本の伝統技術を現代美術へ独自の切り口で転換し、国内外で活躍されている石井亨の個展「漂う/ DRIFTING」を開催いたします。2022年の艸居(本店・祇園)、昨年の艸居アネックス(河原町二条)での二人展に引き続き、SOKYO ATSUMIでは初個展となります。

 

2014年に東京藝術⼤学⼤学院美術研究科美術専攻博⼠後期課程を修了した後、2015年度の⽂化庁新進芸術家海外研修員に選出され、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で2年間研修を経験します。本展と並行して開催されている、札幌国際芸術祭(略称:SIAF)の会場の一つである北海道立近代美術館「1924-2024 FRAGILE[こわれもの注意]」展(〜2月25日まで)、にも出展しています。

 

アメリカ戦後絵画に始まるステイニング技法(滲み)と着物や帯の⽂様染として江⼾時代より継承される日本の伝統的な染織技法である⽷⽬友禅染の技術を⽤いつつ、伝統工芸の領域とは一定の距離を保ってきました。⽷⽬友禅染は、糸目糊というもち米などで作った糊を糸のように細く図柄の輪郭に防染として引き、絹に鮮やかな色彩で四季折々の草花や風景などの模様を精緻な線とぼかしで描き出すのが特徴です。本展では、フィルムカメラで撮影された写真の加工やデジタルバグと伝統染色技法の失敗を意図的に組み込むというプロセスを通して、今日の東京風景を表現した《東京景》シリーズを展示いたします。令和の浮世絵というテーマのもと、現代社会の象徴的な図像を映し出し、変容し続ける現代社会が反映されています。「漂う/ DRIFTING」という展覧会タイトルには色がステイニング技法により画面に[漂う]こと、都市を徘徊しながら、漂流しながら撮影した東京の風景など、複数の意味合いが込められています。2007年にロンドン芸術大学に留学した際に、水の違いで染色が変わるのを発見したことがきっかけとなった《隅田川》や《渋谷川》は、実際にその川の水を汲んで染めることで、川の湿度を可視化し、現代の川の風景を生成しています。

 

石井は留学を経て、客観的に日本で紡がれてきた伝統技術と自らの作品を真摯に見つめ直しました。糸目友禅染技術とステイニング技術、アナログとデジタルの表現要素をかけ合わせ、新たなステイニング絵画の構築や伝統技術の革新と現代美術の刷新を試みます。そして、西洋と東洋の絵画および染色表現の探究と発見を礎に、現代における伝統芸術の在り方を提起いたします。日本の伝統的な染織技法である糸目友禅染で鮮やかに現代社会を描く石井の作品を是非この機会にご高覧いただけますと幸いです。

 

石井亨(いしい・とおる)

1981年静岡県生まれ。2014年、東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻博士後期課程修了。主な個展は、2011年「project N46」オペラシティアートギャラリー(東京) 、2014年「Delirious Metropolis」大和日英基金ジャパンハウスギャラリー (ロンドン)、2018年「Metropolitan Moment」艸居(京都)。主なグループ展には、2013年「EDO POP」ジャパンソサイエティギャラリー、2016年「IMAYO」ホノルル美術館、2017年「Light Sgraffito」ヴィクトリア&アルバート美術館 (ロンドン)、2022年「小石景」艸居(京都)、2023年「KUROOBIANACONDA」AISHONANZUKA (香港)、「8144」艸居アネックス(京都)など。受賞歴には、2011年「イセ・カルチュラル・ファンデーション・学生美術展覧会」デイビッド・ソロ賞受賞、2013年「2013年度博士審査展」野村賞受賞。主なコレクションは、東京藝術大学美術館、ヴィクトリア&アルバート美術館、モリカミ美術館。

 

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