金在寬 (キム・ジェぐワン) : Post Relationship

韓国において幾何学的抽象画の第一人者として知られる金在寛は、1967 年に作家として活動を 開始して以来、グリッドにより構成された幾何学的抽象作品を手がけてきました。幾何学的図形 とその原理を基礎とする純粋な抽象画、つまり、感性よりも理性を基盤として、目に見える自然 な形状よりその下にある根源的な原理を探求し、それを造形化しようとしています。平面作品の ほか金属やアクリルを用いた立体作品など様々な素材でのアプローチを試みており、今回展示さ れる韓紙を素材とした作品では、淡い色彩と垂直線、水平線の組み合わせ、またはそれらのグリ ッドに沿うような特殊な形状のキャンバスにより平面でありながら深い奥行きのある構成を実現 しています。

 

また、金在寛の作品においては「関係性」という言葉も彼の作品を語る上で重要な用語となっ ています。関係とは単独で成り立つことはなく、常に対象の存在が必要になります。そのため、 それは「間」の構造を帯びます。線と線の間、面と面の間というように、金在寛の作品は構造的に 見る時、結局のところ「間」の派生物だといえます。東洋的な世界観で見れば、空と大地の間に人 がいるという「天地人」の関係を暗示しており、韓国の文字ハングルがこの「天地人」の世界観の もとでつくられたという歴史とも重なり、金在寛作品の「間」の構造と興味深い共通点となって います。

 

これまで故郷である韓国・清州を拠点に、韓国内のみならず、日本、アメリカ、フランスでの個展 を開催しているほか、国内外の美術館や公共施設に作品が収蔵されています。金在寛が織りなす 幾何学的抽象画の世界をこの機会にご高覧いただければ幸いです。

 

金在寛(キム・ジェグワン)
1947 年韓国清州生まれ。現在、シェマ美術館館⻑(清州・韓国)、アスペクト現代美術同人会名誉 会⻑、東アジア作家会会⻑、韓国私立美術館協会会⻑を務める。1970 年弘益大学校美術学部⻄洋 画科卒業、1996 年同大学にて美術学博士号取得。 コレクションには、国立現代美術館(韓国)、ソウル市立美術館(ソウル・韓国)、釜山市立美術館 (釜山・韓国)、モスクワ国立中央美術館(モスクワ・ロシア)、⻑崎ブリックホール(⻑崎)、嵯 峨美術大学(京都)など他多数。受賞歴は 1994 年忠清北道文化賞(文化芸術部門)、2012 年アー
トブルー芸術賞、2014 年文化体育部⻑官表彰、2019 年ハ・ジョンヒョン(河鐘賢)美術賞特別作 家賞など多数。