國久真有は 1983 年に大阪府に生まれ、現在は関⻄圏を中心に画家として活躍を広げてい ます。2019 年には、「第 22 回岡本太郎現代芸術賞展」特別賞を受賞するなど、彼女の取り 組みや活動が広く知られるようになりました。
身体を軸とし腕のストロークと遠心力を用いて円弧を重ねて描いていく「WIT-WIT」シリ ーズの名称は、古代ローマ時代の建築家ウィトルウィウスの『建築論』の記述をもとにレ オナルド・ダ・ヴィンチが 1485〜1490 年頃に描いたドローイング『ウィトルウィウス的 人体図』に由来します。四角い平面の中に作家自身の身⻑と同じ⻑さの円が積層し、何次 元もの空間の奥行きが生まれます。 「弧の線」を重ねることで「光」を表現しているという國久。フリーハンドで平面の上に 描き出される線は円弧となりますが、作家自身の視点からすればそれは自らの体に対し真 っ直ぐに存在している線でもあります。本来ならば目に見えないはずの線が、その時の心 情や、季節、環境、気温といった外的要因に応じて選択された色彩でキャンバスの上に描 かれます。
展覧会のタイトルとなっている「BUTTERFLY EFFECT」(バタフライ効果)とは、カオス 理論における予測困難性を表す表現の一つです。わずかな変化を与えたことでその後の状 態が大きく異なってしまう現象を指し、ほんの些細なことも時に歴史を動かすことがある かも知れない、という意味にもつながります。
今春には SOKYO ATSUMI(東京)での個展のほか、ソウルや兵庫県⻄脇市での個展を予定 している國久真有。それらに先立つ形で開催される本展覧会は、後に続く展覧会、作家の 制作活動そのものにどのような影響をもたらすのでしょうか。画面と身体との関係性への 模索から生みだされた独創的な絵画の仕事を、この機会にぜひご高覧いただけますと幸い です。
國久 真有(くにひさ まゆ)
1983 年大阪府生まれ。2003 年にロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校
ファウンデーション・ディプロマ・イン・アート・アンド・デザインコースを修了、2012 年神戶芸術工科大学芸術工学研究科総合アート専攻修士課程修了。
主な個展には 2012 年「1day cafe presentation by kunihisamayu」神戶天昇堂(神戶・兵 庫);2018 年「wit-wit smile selection collection spring 2018」KOBE STUDIO Y3 ♯405(神 戶・兵庫);2018 年「BEAT PER MINUTE」TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)などがあり、 主なグループ展には 2019 年「第 22 回岡本太郎現代芸術賞展」川崎市岡本太郎美術館(川 崎・神奈川);2019 年「AQUA」pavart rome(ローマ・イタリア);2019 年「六甲ミー ツ・アート芸術散歩 2019」(神戶・兵庫);2020 年「+FUSION」原田の森ギャラリー(神 戶・兵庫)などがある。主な受賞歴には 2007 年「神戶芸術工科大学セレンディップコン ペティション」グランプリ;2017 年「UNKNOWN ASIA」審査員賞:松尾良一賞、レビュ アー賞:中島⻨賞、三村康仁賞;2018 年「第 22 回岡本太郎現代芸術賞」特別賞などほか 多数。