京都、2024年7月13日 ― 艸居アネックス(河原町二条)にて、特別展 木村盛康「天目の心 ― いつまでもずっと輝き続ける」を開催いたします。艸居アネックスでは初個展となります。本展では、《禾目天目茶盌(のぎめてんもくちゃわん)》、《油滴天目茶盌(ゆてきてんもくちゃわん)》などの代表的な天目から、木村が長年に渡り探究し、独自の世界を確立した《松樹天目水指(しょうじゅてんもくみずさし)》、《窯変禾目天目茶盌》、《耀変禾目天目茶盌(ようへんのぎめてんもくちゃわん)》、《天目天空茶盌(てんもくてんくうちゃわん)》、《天目アンドロメダ茶盌》、そして、NASAに収蔵されている同シリーズ《天目満耀茶盌(てんもくまんようちゃわん)》を含む約20点を展示いたします。
天目は9000年という時を超え、今もなお人々を強く魅了し続けています。中でも、虹彩に輝く曜変天目は、「器の中に宇宙が見える」と評され、唐物全盛の室町時代には、茶盌の中で最高峰に位置付けられていました。今日、世界中で現存する曜変天目は、日本にある三盌のみで、大徳寺龍光院蔵(京都)、藤田美術館蔵(大阪)、静嘉堂文庫美術館蔵(東京)となっており、すべて国宝に指定されています。
一度上手くいっても次がうまくいかないことも多々ある。1点でも2点でも焼けたことをきっかけにして、自分だけの天目をこれからもあみ出していきたい。 ―木村盛康
木村は、若い頃に安宅コレクション(現・大阪市立東洋陶磁美術館)の国宝・油滴天目を見て、天目を志したと言います。しかし、多くの作家が古典の再現を試みる中で、木村は、その油滴天目を原点にはせず、常に独自が思い描く天目を追求してきました。焼成するたびに無限に変化する天目。そのような中から自分のイメージに合った天目が見つかった時の喜びは計り知れないものがあると言います。
《耀変禾目天目茶盌》は金、青、緑の複雑な色彩が細かく織りなす美しさを放っており、見る人を楽しませています。中国では、禾目文様は兎の細い毛を表し、日本では稲穂の細い毛になぞらえて禾目と命名されました。本展では《松樹天目水指》を展示しますが、木村は優れた《松樹天目茶盌》も多く制作しています。松樹天目は1978年に発表された天目で、松の樹皮を文様とし美しさも際立っています。
スタジオを訪問すると、スポットライトを作品に当てて、「どうです。良いでしょう。」と歓喜溢れる弾みある声で、漆黒の中に浮かび上がる天目の輝きを見せてくれます。木村が吹きかけた鉄釉が沸々と窯の中で混ざり合い、神秘的な表情作り出します。その多様な色彩を放つ天目に吸い込まれそうになる感覚、研ぎ澄まされた表現に国境や世代を超えて多くの人を魅了しています。
木村は来年90歳を迎えます。本展では、木村の70年の天目制作の中でもより顕著な代表作品を展示し、天目の無限の可能性を展覧いたします。
木村 盛康(きむら もりやす)
1935年京都五条坂に生まれる。1966年以降山科を拠点に制作。父、木村繁(1895-1971)は京焼の画工。長兄・盛和(1921-2015)と三兄・盛伸(1932-)は陶芸家。1954年京都市工芸指導研究所研究生として成型・基礎的研究に従事。1957年長兄盛和氏に師事。主な収蔵は、京都国立近代美術館、京都大学、京都迎賓館、京都文化博物館、関西大学博物館(大阪)、上賀茂神社(京都)、春日大社(奈良)、伊勢神宮(三重)、ボストン美術館(マサチューセッツ、アメリカ)、ハーバード美術館(マサチューセッツ、アメリカ)、NASA(ワシントンD .C. 、アメリカ)、ウルフソニアン美術館―フロリダ国際大学(フロリダ、アメリカ)、大英博物館(ロンドン、イギリス)、国立故宮博物院(台北、台湾)など多数。