目玉は卵を妬んでいる。
卵は脆く不安定であるその白い球体の内に生命の源を宿しているから。
卵は目玉に憧れている。
目玉はその白い球体で直接世界に触れることができたから。目玉は世界に触りうっとりと怯えていた。
両者共、同じ楕円的球体の形状を持つが(睾丸も)、目玉は決して卵にはなれないし、卵は目玉を愛することはできない(目玉焼きはできる)
しかし両者ともシュールレ アリスト達にとても愛されたモチーフであることに誇りを持っている。
―山田周平
山田は1974年生まれ。現在は京都を拠点としながら精力的に活動をしています。
2003年写真新世紀優秀賞受賞、東京のみならずロンドンやニューヨークなどで個展を開催、2013年開催のアーモリーショーでは、唯一の日本人として当時のアンディウォーホール美術館 (ピッツバーグ) 館長のエリック・シャイナーにより選出され、様々なメディアでも話題となりました。
ニヒリズムへの関心を背景に山田は、現代社会に対する考察を通じて作品を制作してきました。写真、ビデオ、インスタレーション、平面と多岐にわたるメディアを取り扱っていますが、 いずれの作品にも共通しているのは対象を俯瞰するような鋭い視点です。 作品はアイロニカルであったり、時にはナンセンスな表情を見せたりしながら、その独特の距離感で捉えられた事象は、鑑賞者の理解に微妙な「ずれ」を引き起こし、問いや疑いを抱かせます。
今回の展覧会の中心となるのが、アルフレッド・ヒッチコックの映画作品「白い恐怖」からインスパイアされた、2.5mにも及ぶ目玉が描かれたバルーン作品《EYE》です。「白い恐怖」は1945年 にヒッチコック監督によって制作されたサイコスリラー映画です。この映画の舞台美術の制作には、 シュールレアリズムの奇才サルバドール・ダリが協力していたことが広く知られています。山田はシュールレアリズムのアーティストが好んだ目玉をモチーフとして用いながら、現代社会を描写します。目玉はAIにより画像生成したものをベースに描かれており、扇風機からの風によってバルーンが揺れ動く様子がイメージ(情報)に消費され、翻弄される現代人と重なります。
平面作品の《卵》もまた、ダリやルネ・マグリットがしばしば取り上げた卵がモチー フになっています。卵型のキャンバスには、建物が燃える様子が描かれ、卵が示唆する創造性と、それに相反した破壊的なイメージを一つのキャンバスに組み合わせることで挑発的な感覚を作品に表現しています。
SOKYO ATSUMIでは初個展となるこの機会に是非ともご高覧いただきますようお願い申し上げます。
山田周平
1974年生まれ、京都在住。主な個展にDaiwa Anglo-Japanese Foundation、ロンドン (2019);AISHONANZUKA、香港 (2017・16・14) ;The Armory Showニューヨーク (2013) 。主なグループ展に「Positionalities」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都(2022);「KUROOBIANACONDA 03 SANMAIOROSHI」TEZUKAYAMA GALLERY、大阪 (2021) ;「タグチコレクション Next World 夢みるチカラ」いわき市立美術館(2021) ;「Unclear nuclear」URANO、東京(2016) ;「Resonance」Sao La Gallery、ホーチミン (2014)などがある。ニューヨークのISCPレジデンスプログラム(2017)に参加。写真新世紀優秀賞受賞(2003)。作品はタグチコレクション、G foundationなどに収蔵されている。