降り積もった雪が春になって解け、水になるように、私達の暮らしはゆっくりと絶えず変化してゆく自然や文化の移り変 わりや儚さと共に有ります。また、対立や戦乱が絶えない私達の緊張反感がゆるみ、和解の空気が生じてくることへの希 望を込めました。水、空、地球を連想させる⻘をゆっくり見つめる静かな場になりますように。― 堀江美佳
SOKYO ATSUMI では写真家、堀江美佳の個展「雪解け水」を開催いたします。今秋、艸居本店(祇園)にて 開催された個展に引き続き、初個展となります。
京都出身である堀江は、京都芸術大学で写真とデザインを学んだ後、ロンドンのキングストン大学へ留学し ます。帰国後の 2013 年より、石川県加賀市山中温泉を活動の拠点としています。住居兼アトリエである古⺠ 家近くの山から、高級和紙の原料として有名な雁皮(がんぴ)という植物を採取し、側に流れる天然水を用 いて和紙を漉き作品の支持体としてきました。自身で手作りした手漉き和紙に、四季折々に変化する自然の 風景をサイアノタイプで映し出した作品は、海外の展覧会に参加するなど国内外で注目を集めています。19 世紀に発明された古くからある写真方式「サイアノタイプ」を用いている点も堀江の作品の大きな特徴です。 ⻘一色で表現されるこの写真は、太陽光によって印画することができ、日本語の「⻘写真」という単語の語 源にもなっています。
石川県の雁皮だけでなく、写真を現像する、和紙を漉くなどの作業に欠かせないきれいな水があることも制 作において重要な事柄です。堀江の作品づくりにぴったりともいえる現在の環境に移り住んでから 10 年が経 過しました。自然のうつろいを夢中になって撮影してきた堀江にとって、近年は万葉集の歌に出てくる日本 古来の花や日本の織りや着物など、いつか途絶えるかもしれない日本文化を「学びたい、写したい、そして 残したい」という強い思いを持ちながら生活・制作していると述べています。
太陽光で露光をする古典的写真技法と、地域に由来する手漉き和紙で表現する堀江の作品には美しさや儚さ、 強さが共存しています。⻘色の豊かな階調には、文化の違いや時間経過を忘れて没入してしまうような奥深 さや郷愁を感じることができるでしょう。また、現地に生息する雁皮の刈り取りから、繊維の叩解、紙漉き、 圧搾、乾燥という⻑く根気のいる工程を自身の制作時間の大半にあてることで、現代の大量消費社会や刻々 と破壊されていく自然環境に警鐘を鳴らします。デジタル上でみる写真とはまた違う特別な空間で作品を是 非ご高覧いただけましたら幸いです。
堀江美佳
1984 年京都府生まれ。現在、石川県加賀市山中温泉を拠点に国内外で活動。2007 年京都造形芸術大学情報 デザイン学科卒業、2009 年ロンドンキングストン大学ファイン・アート修士課程修了。 主な個展に、「WATERFRONT II」、trace、京都(2018);「Life is a Circle」、紙司柿本、京都(2019); 「Kiku」、Bildhalle、アムステルダム、オランダ (2022) ;「Trees, Water, and Light」、IBASHO Gallery、アントワープ、ベルギー (2022) ; 「木、水、そして光」、 艸居、京都(2023)。 主なアートフェアにパリ・フォト、フランス (2022) ; KOGEI Art Fair Kanazawa、 石川(2022); Art Collaboration Kyoto、京都(2023)などがある。