セリテラの作品は炭化した丸太、風化した木、森の天使と例えられる白樺のようなハイパーリアルな質感は全て手びねり、手彫りで形成されています。セリテラはアジアの茶文化の発展とそれが陶磁器に与えた影響に導かれ、千利休によって1500年代後半に広められた「侘び寂び」の哲学を作品に取り入れています。またセリテラは、人間の無関心にもかかわらず、自然がいかに粘り強くその素晴らしさを維持し生存を勝ち得てきたかを作品に表現しようと試みており、陶という素材がもつ性質を自然環境の脆さと耐久性に重ね合わせています。
また、セリテラの作品において「擬人化」も彼の作品を語る上で切り離せないものとなっています。有機的な質感の作品のそれぞれにメタファーが込められており、擬人化された要素は、自然環境との相互作用や関係性から、時代を超えて切り離すことのできない人間性を表現しています。そこには自身の作品を通して鑑賞者の環境に対する意識を高め、その行動にも影響を与えられるようにという意図が込められています。
「アートとは繋がり、共鳴、反響の場としての役割を果たすものであり、私の手によって語られる私の潜在意識の物語となるのです」と語るセリテラ。これまでにアメリカを中心に130回以上の展覧会に作品を出展しているほか、メトロポリタン美術館やスミソニアン・アメリカ美術館、カーネギー美術館といった多くの美術館に作品が収蔵されています。手びねりによる超現実的な造形から作家の自然観や哲学を感じ取っていただければ幸いです。
エリック・セリテラ(Eric Serritella)
1963年アメリカ・ニューヨーク州エレンヴィル生まれ。現在は、ノースカロライナ州チェペルヒルにて制作。1985年イサカ大学にて芸術学士号取得。
コレクションには、メトロポリタン美術館(ニューヨーク・ニューヨーク・アメリカ)、エバーソン美術館(シラキュース・ニューヨーク・アメリカ)、カーネギー美術館(ピッツバーグ、ペンシルバニア・アメリカ)、スミソニアン・アメリカ美術館(ワシントンD.C.・アメリカ)など他多数。受賞歴は2003年ダウンタウン・シラキュース・アーツ&クラフツ一位、2007年Regional2007グランプリ、2014年スミソニアン工芸展陶芸優秀賞、2019年ジョイスW・ポープ賞グランプリなど多数。