栄枯盛衰の中に美をみい出す小島の作品は、原土や陶土のブロックを組み合わせることで表現されます。 近年では台湾の伝統的な屋根瓦を焼成したシリーズにも取り組んでおり、焼成によるたわみを特に意識して いると小島は言います。 城壁や石垣など人々が積み上げてきた文明が、忘却の果てに朽ちようとするも足掻くようにして輝く一瞬の 光。溶けたガラスを覗き込むと思わずそうした光景が立ち上ります。
「人間が構築したものはいつかは崩壊する。人類社会の繁栄は永遠に続くはずがなく、いつもどこか綻び や歪みある」と語り、その綻びや歪みの哀れの中に存在する美を陶芸を通じて表現してきた小島。特に今年 は感染症の流行を始め社会情勢の大きな変化により、その判然とした事実が改めて作家の目の前に突き付 けられた一年でした。 静かに鎮座する小島の作品は、この世に永遠に続くものはないとしながらもそれをただ悲観するのではな く、そこに確かにある儚くも美しい一瞬の光を私たちの目の前に提示します。
小島 修(こじま・おさむ)
1973 年福井県生まれ。現在三重県にて制作。2016 年国立台南芸術大学応用研究所修士課程卒業。滋 賀県立陶芸の森(甲賀市、滋賀)、アーチーブレイ財団(モンタナ州、アメリカ)、国立台南芸術大学(台南市、 台湾)などにて滞在制作プログラムに招聘。これまで新北市立鴬歌陶磁博物館(新北市、台湾)、ジェイソン・ ジャックギャラリー(ニューヨーク、アメリカ)などにて個展を開催し国内外で作品を発表。主な受賞歴には、 2005 年第 7 回国際陶磁器展美濃 2005 陶芸部門銅賞(同 2014 年)、2006 年秀明文化財団第 17 回秀明文 化基金賞、2012 年台湾 2012 国際陶芸ビエンナーレ金賞(2016 年同ビエンナーレにて大賞)がある。 主なコレクションは、京都市京セラ美術館(京都)、滋賀県立陶芸の森、アーチーブレイ財団、台北縣立陶磁 器博物館、サミュエル・P・ハーン美術館(フロリダ州、アメリカ)など多数。