シルヴィ・オーヴレ+梅津庸一:「シルヴィとうめつ。おばけやしき?」

本展では、梅津とオーヴレそれぞれの作品をはじめ、初となるコラボレーション作品も展示いたします。本展のキービジュアルはオーヴレがパリのアトリエで途中までつくった作品を郵送し梅津が仕上げたものです。先手・後手、介入度を試行錯誤しながらさまざまなレベルで「共作」が生み出されることでしょう。制作のプロセスに揺さぶりをかけ、さらに「作品は個に帰属するのか?」「作品をつくると展覧会をつくるの違い」など一筋縄ではいかない試みがなされます。

 

これまで梅津は、日本における近代美術の展開とその末尾に位置する自分自身の関係を探求するところからスタートしました。近年の梅津のアプローチは多岐に渡り、ドローイング、絵画、映像、私塾の運営、展覧会のキュレーション、非営利ギャラリーの運営、文筆業など様々な領域を横断しながら「美術とは何か」、「作ることは何か」と問います。2019年からは陶芸、2022年からは版画を制作しはじめ、より幅広い視点から美術を捉え直そうとしています。

 

オーヴレは絵画からキャリアをスタートさせ、その後はファッション、彫刻、陶芸と表現の幅を広げてきました。絵を描き始めたのは10代の頃で、作品に美術としての要素、彫刻、陶芸が追加されたことを除けば、彼女の作風はこの20年間変わっておらず、このことは注目に値します。一般的にはあまり組み合わされない素材の組み合わせを特徴とし、日常的に世界中で使われている箒や、浜辺で見つけた木々やプラスチック、日常生活を通して出会う美しいと感じた古びたおもちゃなどの素材と陶芸を組み合わせ、紙芝居、イタリアの仮面を使用する即興劇、コンメディア・デッラルテのキャラクターを引用するなど、オーヴレらしい知的でユーモア溢れる世界観を作り出します。

 

両者は生まれも普段活動している環境も全く違いますが、互いの活動や作品に興味を持ち本展が企画されることになりました。一見すると2人の作品には共通点がありませんが「彼岸と此岸のあわい」に作品が成立しているとは言えないでしょうか。

2人が話す言語は異なりますが、作品を通して築き上げる2人の「制作」の射程を是非ご高覧いただけましたら幸いです。

 

 

 

梅津 庸一(うめつ よういち)

1982年山形県生まれ。現在、相模原と信楽、カワラボで制作。2005年東京造形大学(東京)卒業。パープルーム主宰。主な個展に、2014年「智・感・情・A」ARATANIURANO(東京);2021年「平成の気分」艸居(京都);2021年「梅津庸一 ポリネーター」ワタリウム美術館(東京)、そして国立国際美術館にて開催中の特別展「梅津庸一|クリスタルパレス」などがある。主なグループ展には、2017年「恋せよ乙女!パープルーム大学と梅津庸一の構想画」ワタリウム美術館(東京);2019年「百年の編み手たち―流動する日本の近現代美術―」東京都現代美術館(東京);2020年「梅津庸一キュレーション展 フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」日本橋三越本店本館6階コンテンポラリーギャラリー(東京);2021年「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」京都市京セラ美術館(京都);2021年「絵画の見かた reprise」√K Contemporary(東京); 2021年「6つの壺とボトルメールが浮かぶ部屋 梅津庸一 + 浜名一憲」艸居アネックス(京都);2023年森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京);2023年「梅津庸一・神崎倍充 二人展|ひげさん」艸居(京都)、艸居アネックス(京都);2024年「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?―国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」国立西洋美術館(東京)、そしてレ・フランシスケーヌ(ドーヴィルノ・ルマンディー・フランス)にて開催中の森美術館との共同企画展「浮世:ジャポニズムから日本の現代アートまで」などがある。主なコレクションには、東京都現代美術館(東京);森美術館(東京);愛知県美術館(名古屋・愛知);山形美術館(山形);高橋コレクション(東京)などがある。

 

シルヴィ・オーヴレ

1974年パリ生まれ。現在、パリで制作。1993年モンペリエ芸術大学(フランス)卒業、1996年にシティ・アンド・ギルド・オブ・ロンドン・アートスクール(イギリス)にて学士を取得。主な個展に、2015年「Rings」ギャルリ・フランチェスカ・ピア(チューリッヒ・スイス);2016年「Johnʼs feet」チェンバレン・ビルディング、チナティ財団(マーファ・テキサス・アメリカ);2019年「Les Cambuses」ギャラリ・ローラン・ゴダン(パリ・フランス);2020年「Aux foyers」モリー・サバタ、アルベール・グレーズ財団(サブロン・フランス);2021年「野獣と箒」艸居(京都);2022年「マーガレット」SOKYO ATSUMI(東京)などがある。主なグループ展には、2009年「Nouveau Festival」ザビエル・ドゥルー、パントゥール・パルレ(パリ・フランス);2017年「Medusa」パリ市立近代美術館(パリ・フランス);2018年「Citoyennes paradoxales」FRAC シャンパーニュ・アルデンヌ・コレクション、トー宮殿(ランス・フランス);2018年「Fire and Clay」ガゴシアン・ギャラリー(ジュネーヴ・スイス);2019年「La Musée」コミッショナー:アザド・アシフォヴィッチ、 ギャルリ・イタリアンヌ(パリ・フランス);2020年「All of Them Witches」ジェフリー・ダイチ・ギャラリー(ロサンゼルス・カリフォルニア・アメリカ);2023年「エマイユと身体」銀座メゾンエルメス フォーラムなどがある。主なコレクションには、パリ市立近代美術館(パリ・フランス);Collection du Centre National des Arts Plastiques(パリ・フランス);総合文化センター「MÉCA」(ボルドー・フランス);Consortium Museum(ディジョン・フランス);FRAC Normandie Caen(カーン・フランス)などがある。