小島修:真朱と群青

ブロック状に形成された陶土や原土、瓦、ガラスといった素材を用い、力強さと繊細さを併せ持つ作品を手掛けてきた小島修。作品を一見すると、荒々しい岩肌や、岩の隙間から湧き出た水のような自然風景を連想さえますが、Nostalgiaシリーズをはじめとする近年の作品に関し、小島は、「城壁や石垣などに使用されている石やレンガのような人為的なものとして位置づけている」のだと言います。

 

小島の作品に宿るのは、人間の文明によって生み出されたものの象徴としてのそれらが今にも朽ち果てようとする、その瞬間に放たれる光彩のような美しさです。また、朱色の瓦が幾重にも重なり合う様子は、焼成を重ねた素材の質感と色合いと相まって堆積した記憶そのもののように見る者を過去への追憶に誘います。「Nostalgia=懐旧」と名付けられた通り、過去の記憶を呼び起こす現代のランドスケープであると言えます。

 

「この世に永遠のものはなく人間が生み出したものにはいつもどこか綻びと歪みがある」と小島は語ります。栄枯盛衰の繰り返し、その哀れさの中に確かに存在する美しさを求めて、小島の探求はこれからも続きます。

 

 

小島 修(こじま おさむ)

 1973年福井県生まれ。京都精華大学美術学部造形学科で陶芸を学び、滋賀県立陶芸の森、アーチーブレイ財団(モンタナ州)、国立台南芸術大学(台湾)などにて滞在制作プログラムに招聘。これまで新北市立鴬歌陶磁博物館(台湾)、ジェイソン・ジャックギャラリー(ニューヨーク)などにて個展を開催し国内外で作品を発表。現在は三重県にて制作を行う。主な受賞歴には、2005年第7回国際陶磁器展美濃2005陶芸部門銅賞(同2014年)、2006年秀明文化財団第17回秀明文化基金賞、2012年台湾2012国際陶芸ビエンナーレ金賞(2016年同ビエンナーレにて大賞)がある。

主なコレクションは、京都市京セラ美術館、滋賀県立陶芸の森、アーチーブレイ財団、台北縣立陶磁器博物館など。