サラ・フリンにとって作品の制作とは、乾いていく過程で様々に変化しつづけるろくろ上の土 をどう整形するかという挑戦であり、そしてその飽くなき探求の結果、作り出されるのが彫刻的 で装飾的な器です。
一般にろくろで作られる器は左右対象で環状のものとなりますが、彼女の作品はろくろで形 成した後、切り込みを入れ、繋げたりひねったりすることによりその特徴的なフォルムを手に入 れます。いずれも素材に対する深い知識と理解、積み重ねてきた経験によりなせる技と言えます。 またそれと同様に彼女が気を遣うのが釉薬選びです。間違った釉薬や平凡な釉薬をかけられ た器は平凡な器にしかならず、美しい釉薬をかけられた平凡なつくりの器は、やはりただの平凡 な器にしかならないのだとフリンは言います。1260℃から 1280℃のガス釜で焼成された作品は、 複雑な色合いの黒、温かく鮮やかな黄色、涼しげで繊細な白といったそれぞれの形が引き立つ色 彩をまとって、見る者を深く魅了してやみません。
Sara Flynn(サラ・フリン)
1971 年アイルランド、コーク州生まれ。クローフォード・カレッジ・オブ・アート・アンド・ デザインで陶芸を学び、現在は北アイルランドのベルファストにて制作を行う。主な受賞歴には、 2010 年ピーター・ブレナン・パイオニア・ポッター賞、2016 年ゴールデンフリース賞(同 2019 年)、2017 年ロエベ・クラフト・プライズ(ファイナリスト)がある。 主なコレクションは、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(イギリス)、アイルランド 国立博物館(アイルランド)、ガーディナー博物館(カナダ)、フィッツウィリアム博物館(イギ リス)など多数。