現代美術⾋居では⻘⽊千絵個展「孤独の⾝体」を開催致します。弊廊では初の個展に なります。⻘⽊は⼤学時代より⼀貫して、⾃分の内側に眠る「何か」と対峙することを 作品の根底とし、腰から上が歪み、引き伸ばされ、溶解したようなヒト型の、圧倒的な インパクトの⼤型の漆造形作品「BODY」を制作してきました。
既に彫刻の制作などを始めていた学⽣時代の⻘⽊は、後の恩師、⽥中信⾏の漆の造形 作品「Orga」と「⼼臓を掴まれるような衝撃的な」出会いをはたします。「⾃分⾃⾝が 呑み込まれてしまうような」漆の奥⾏きを覗き⾒、漆こそが、⾃分の中にある「何か」 と振幅し、「形態だけで表現するにはあまりにも得体の知れない」それを表現し得るも のだと考えます。
全ての⻘⽊作品の制作は、その「何か」と潜在意識下で対話することを起点として始 められます。⽬を瞑り、⾃分を殻の中に閉じ込めると、感情は無防備で剥き出しの状態 になると⾔います。その際限の無い闇の中で孤独になるとぼんやりと現れる影、闇に飲 み込まれるような不安、逆にそっと包まれて守られているような安⼼感。「BODY」と名付けられた⼀連の作品群は、⾃分の闇/ 殻/ 潜在意識の中で、孤独の不安と⼼地よさ の狭間に揺れる⻘⽊⾃⾝を投影しています。
あの滑らかで深い漆の鏡⾯の制作には⾮常に⼿間がかかることは良く知られていま す。仕上げまでに50近い⼯程があり、特に作品表⾯が⼤きい⻘⽊にとっては想像を絶 する作業量で、⼀回の研ぎに三⽇を要すると⾔います。完成まで予断の許されない、精 神を研ぎ減らす過酷な作業です。ただし、そうして全神経を研ぎ澄まして漆の深層へ没 ⼊する⼯程は、その表⾯に⾃分⾃⾝を埋め込んでいくために無くてはならないもので、 それは他の化学的な塗料とは置換不可能なものだと⻘⽊は⾔います。「漆は、私の作品 において、私の精神世界を表現する上で重要な役割を担っているのであり、私は、漆を 全⾯的に信頼し、すべてを委ねているのである」。
本展では、「BODY」シリーズの出発点となった、「BODY - 内と外 -」の再制作を含 む、⼤型作品3点に合わせて、⼩作品4点、ドローイングから制作した 6 点を展⽰致し ます。
⻘⽊ 千絵 (あおき ちえ)
1981 年岐⾩県⽣まれ。⾦沢美術⼯芸⼤学 ⼤学院 博⼠後期課程 美術⼯芸研究科 ⼯芸 研究領域 漆・⽊⼯コース 修了(芸術博⼠号取得・学⻑賞)。現在、⾦沢美術⼯芸⼤学 助教。ミネアポリス美術館(ミネアポリス、ミネソタ)、徳島県⽴近代美術館(徳島)、 湖北美術館(武漢、中国)、他収蔵。