呉須を施した花の一生を表現した作品には、 生命の力強さ、華やかさと儚さが内在してい ます。橋本の作品の特徴でもある青は、空、 海、水を想起させ、またそれらは、生命の源 の力強いイメージがあります。循環するエネ ルギーを“青”という色で表現するとともに、 種が芽吹き、成長し、開花する“花”の持つ 開放のエネルギーを形に表し、自然の儚くと も力強いありのままの姿を陶の上に写し出 しています。
橋本の作品は、まず大きなたたらを作り、そ れを手で伸ばして成型していき、半乾きの状 態で 10 種類程の道具を使用し削り出すこと で装飾を施します。今回はその削りにも今ま での繊細な危うさを感じさせる削りから、骨 太で大胆な削りへと変わりつつある姿を汲 み取る事が出来ます。
これまでの作品は、薄く棘がありとても繊細な印象でしたが、今展の作品は、少し丸く刺がなく なり、母として暖かく子供を見守る大らかさを感じさせます。以前は茎が 1 つだったのが、2 つ、 3 つと増え、少女から母に移り変わった自身の成長と、自身をとりまく環境の変化を子供という 存在を媒体に表現しています。彼女の作品から巡り来る命の息吹と新たな未来への可能性を感 じていただけると幸いです。
橋本 満智子(はしもと・まちこ)
1986 年京都府生まれ。2007 年京都嵯峨芸術大学短期大学部美術学科卒業。2009 年京都嵯峨芸術 大学短期大学部専攻科美術専攻卒業。2009 年第 37 回京都嵯峨芸術大学卒業制作展専攻科賞受 賞。第 2 回神戸ビエンナーレ現代陶芸展審査員特別賞受賞等。現在は京都市伏見に工房を構え、 制作を続けている。