2015 年の日本初個展「ジェニファー・リー 信楽・ロンドン:旅の軌跡と蓄積」に引き続き弊廊で の2度目の個展となります。今展では新作の壺 10 点、陶版 1 点、湯呑み 16 点、ドローイング 8 点 を展示いたします。
凜とした佇まいの壺に、リーの作品に一貫して宿る美を見いだすことが出来ます。「私の作品は工 房における素材の関係性を重視します。大きい作品は、つまんだり巻いたりといった古代から使わ れてきた手捻り技法でできており、最も基本的な要素―土、水そして酸化物から成ります。」と、 リーは語ります。小さい作品は、2014 年陶芸の森での制作滞在期間中に 30 年ぶりに再開した轆轤 形成によるもので、いくつかはその後ロンドンに戻った後に制作したものです。どれも手に収まり が良い親近感のある作品です。
ジェニファー・リーは釉薬を使うのではなく、窯に入れる前に酸化金属を土に混合して色付けをす るという独自の手法を編み出すことで、色と形が融合する独特のスタイルを確立しています。リー は旅先で酸化物や道具を買いそろえ、土をロンドンの工房に数十年寝かせることが焼成後の壺の仕 上がりに変化をもたらすことを見つけ出しました。土を焼成することで、瞬間を永遠に保存する像 を作り出すことができるとリーは感じます。
リーの陶芸作品は高度に洗練された現代性とともに普遍性を持ち合わせています。制作後に作品の 記録として描かれるペンシルドローイングは、実際の作品とは離れ、別の世界観を持っています。 制作の記憶を留めながらも、見る者の想像力を誘発する作品です。
1956 年スコットランドのアバディーンシャー生まれ。1975-1979 年エディンバラ大学で陶芸とタペ ストリーを学び、その後、米国旅行の奨学金を受けて 8 ヶ月滞在。西海岸の現代陶芸や南西に位置 するアメリカインディアンの先史時代の陶芸を研究します。1980-1983 年ロイヤルカレッジでは、 色土を使った手捻り形成の制作方法を築きます。スコットランドとスウェーデンの美術館で回顧展 を開催。リーの作品は大英博物館、ヴィクトリア&アルバート美術館、ストックホルム国立美術館、 ロサンジェルスカウンティー美術館、メトロポリタン美術館など、40 以上の美術館に所蔵されて います。
1994 年に初来日。2009 年にはイッセイミヤケによる展覧会「U-TSU-WA」展が 21_21 DESIGN SIGHT で開催されました。インスタレーションは建築家の安藤忠雄が手がけ、リーの器が大きな水面に幻 想的に浮かべられました。
2014-2015 年と招聘作家として滋賀県立陶芸の森で滞在制作をしました。その後も、ささま国際陶 芸祭への参加、益子陶芸美術館での展示など、日本との関わりを深めていきます。2015 年弊廊で の初個展出展作品から大型の作品 2 点が兵庫県陶芸美術館のコレクションとなっています。